高麗人参(Panax ginseng)

最終更新:2026年9月23日 / 広告について

高麗人参(こうらいにんじん)は、東アジアで古くから滋養強壮の代表として使われてきた生薬です。朝鮮人参、オタネニンジンとも呼ばれ、この図鑑で扱う素材の中では、人を対象にした研究がもっとも多い素材のひとつです。そのぶん、「研究があること」と「効果がはっきりしていること」の違いがよく分かる素材でもあります。

このページの要点

  • 勃起機能については、9件の試験をまとめた2021年のコクラン・レビューがあり、効果はあったとしても「ごくわずか」で、根拠の確実性も低いと評価されています。
  • 疲労感については、高麗人参を含む漢方薬などの処方では効果を示す報告がある一方、高麗人参単独では効果がはっきりしていません。
  • 糖尿病の薬、血液をサラサラにする薬、一部の抗うつ薬などと飲み合わせの報告があります。薬を飲んでいる方は、始める前に医師や薬剤師に相談してください。

研究で分かっていることの早見表

根拠の強さは、当サイトの編集方針で定めた4段階で示しています。

テーマ根拠の強さひとことで
勃起機能限定的複数の試験をまとめた評価で、効果はあってもごくわずか。根拠の確実性は低い
性交が「できる」という自己評価限定的本人の評価ではやや改善したという結果がある
疲労感不十分高麗人参を含む処方では報告があるが、単独では結果が分かれている
血糖値不十分予備的な研究にとどまる
免疫・かぜの予防不十分小規模な研究にとどまる
がんの予防不十分観察研究や試験管の研究が中心で、比較試験での確認はない

高麗人参はどんな植物か

高麗人参のイラスト。手のひら状に広がる葉、茎の先にまとまってつく赤い実、枝分かれした白い根
高麗人参:葉と赤い実、枝分かれした根

高麗人参(学名 Panax ginseng)は、ウコギ科パナックス属の多年草です。朝鮮半島や中国東北部、ロシア極東の山地が原産で、現在は韓国や中国で大規模に栽培されています。生薬として使われるのは根で、収穫までに4〜6年ほどかかります。

日本では江戸時代に栽培が始まりました。幕府が各地の大名に種を分け与えて栽培を奨励したことから、「御種(おたね)人参」とも呼ばれます。現在も長野県や福島県、島根県などで栽培が続いています。

加工方法によって、主に次の種類に分けられます。

  • 水参(すいじん):掘りたての生の根。
  • 白参(はくじん):生の根を乾燥させたもの。
  • 紅参(こうじん):根を蒸してから乾燥させたもの。蒸すことで赤褐色になり、成分の組成も一部変化します。日本薬局方にも「ニンジン」「コウジン(紅参)」として生薬が収載されています。

「○○人参」の見分け方

「人参」と名のつく素材はいくつもあり、よく混同されます。野菜のニンジン(セリ科)とはまったく別の植物です。

名前植物メモ
高麗人参(朝鮮人参・オタネニンジン)ウコギ科 Panax ginsengこのページの素材。伝統的に「気を補う」強壮の生薬
田七人参(三七人参)ウコギ科 Panax notoginseng同じ仲間だが、伝統的な用途は止血と血のめぐり。田七人参のページへ
アメリカ人参(西洋人参)ウコギ科 Panax quinquefolius同じ仲間だが、成分の構成が異なる
シベリア人参(エゾウコギ)ウコギ科 Eleutherococcus senticosus同じ科だがパナックス属ではない、別の植物
マカ(ペルー人参)アブラナ科 Lepidium meyenii「人参」は愛称にすぎず、まったく別の植物。マカのページへ

研究結果や注意点は種類ごとに異なります。製品を選ぶときや情報を読むときは、どの植物の話なのかを学名で確認するのが確実です。

主な成分

高麗人参の主な成分は「ジンセノシド」と呼ばれるサポニン類で、数十種類が知られています。ジンセノシドは、種類によって体にはたらく方向が異なる(ある種類は神経を興奮させる方向に、別の種類は鎮める方向に働く)ことが、動物実験などで報告されています。紅参に加工すると、生の根にはほとんどない種類のジンセノシドが生じることも知られています。

ただし、人が飲んだときにどのジンセノシドがどれくらい吸収され、どう働くのかは、まだ十分には分かっていません。製品によって含まれるジンセノシドの量や種類が大きく違うことも、研究結果がばらつく原因のひとつと考えられています。

研究で分かっていること

勃起機能

この分野の研究を評価する際に信頼性の高い「コクラン・レビュー」が、2021年に高麗人参と勃起機能について発表されています。軽度から中等度の勃起機能の低下がある20〜70歳の男性587人を対象にした、9件の試験がまとめられました。いずれも高麗人参と偽薬(プラセボ)を比べたもので、期間は最長12週間です。

結論は次のようなものでした。

  • 国際的に使われている勃起機能の質問票で評価すると、高麗人参の効果は、偽薬と比べて「ごくわずか」にとどまる可能性が高い。
  • 「性交ができる」という本人の自己評価は、やや改善する可能性がある。
  • 副作用の発生率は、偽薬とほとんど変わらない可能性がある。
  • 勃起不全の治療薬(PDE5阻害薬)と比べた試験は見つからなかった。

また、根拠の確実性は多くの項目で「低い」と評価されています。つまり、今後の研究で結果が大きく変わる可能性があるということです。「精力回復の王道」というイメージに比べると、かなり控えめな結果と言えます。

疲労感

原因のはっきりしない慢性的な疲労を訴える人を対象にした試験では、高麗人参で疲労感が軽くなったという報告があります。一方で、疲労に関する研究をまとめた2023年の分析では、高麗人参を含む漢方薬などの処方では疲労の軽減が見られたものの、高麗人参単独では効果がはっきりしませんでした。がん治療中の疲労についても、研究結果は一致していません。

その他

血糖値、免疫機能、血圧、更年期症状などについても研究がありますが、いずれも小規模なものや予備的なものが中心で、確かな結論は出ていません。がんの予防については、高麗人参をよくとる人にがんが少なかったという観察研究がありますが、比較試験で確かめられたものではありません。

まだ分かっていないこと

  • 12週間を超えて飲み続けたときの有効性と安全性
  • 紅参と白参、産地、根の年数による効果の違い
  • どのジンセノシドが、どれくらいの量で働くのか
  • 勃起不全の治療薬と比べたときの位置づけ

摂り方の目安

基本は、製品に表示された1日の目安量を守ってください。参考までに、コクラン・レビューに含まれた試験の多くは、1日3g以下の量を4〜12週間使うという条件で行われています。

高麗人参は製品によって、根の粉末、エキス(抽出物)、ドリンク、お茶など形がさまざまで、同じ「○mg」でも中身が大きく異なります。ジンセノシドの量が表示されている製品のほうが、比較の手がかりになります。

漢方薬を飲んでいる方へ

補中益気湯、十全大補湯、人参湯など、多くの漢方薬には「人参(ニンジン)」が含まれています。漢方薬と高麗人参の健康食品を一緒にとると、同じ生薬を重ねてとることになる場合があります。併用する場合は、処方した医師や薬剤師に相談してください。

安全性と、注意が必要な人

短期間、一般的な量を使う範囲では、大きな問題は多くありません。ただし、次のような副作用が報告されています。

  • 寝つきが悪い・眠りが浅い、神経が高ぶる、動悸
  • 口の渇き、吐き気、下痢などの胃腸の症状

まれに、長期間の摂取後に躁状態(気分が異常に高揚し、眠らなくても平気になる、話が止まらないなど)が起きた例も報告されています。

飲み合わせに注意が必要な薬

  • 糖尿病の薬(インスリン、SU薬など):血糖値が下がりすぎるおそれがあります。
  • ワルファリンなどの抗凝固薬、アスピリンなどの抗血小板薬:薬の効き方に影響するという報告がありますが、結果は一致していません。いずれにしても自己判断での併用は避けてください。
  • MAO阻害薬(一部の抗うつ薬・パーキンソン病の薬):躁状態に似た症状を起こしたという報告があります。
  • イマチニブなど一部の抗がん剤、一部の抗HIV薬:肝臓への負担が増えた例が報告されています。

このほか、次に当てはまる方も、使う前に医師や薬剤師に相談してください。

  • 手術の予定がある方:海外の医療機関では、手術の少なくとも1週間前には中止することが推奨されています。飲んでいることを必ず医師に伝えてください。
  • 妊娠中・授乳中の方、子ども:安全性を確かめたデータがありません。
  • ホルモンが関係するがんの治療中・治療歴がある方:試験管の研究でホルモンに関わる作用が報告されており、臨床的な意味ははっきりしていませんが、主治医への確認をおすすめします。
  • 高血圧の方、不眠がある方:血圧への影響については研究結果が一致していません。症状が悪化するようなら中止してください。

品質の選び方

  • 学名・種類:Panax ginseng(高麗人参)であることが明記されているか。アメリカ人参やシベリア人参とは別物です。
  • 加工方法と部位:紅参か白参か、主根かひげ根かが示されているか。
  • 1日あたりの量:1日の目安量あたり、高麗人参が何mg入っているか。エキスの場合は、濃縮の倍率やジンセノシドの量が表示されているか。
  • 「6年根」などの表示:根の年数は品質の目安のひとつとして使われますが、年数が長いほど効果が高いことを示した比較試験はありません。
  • 検査と販売者情報:残留農薬などの検査結果や、国内の販売者名・所在地・問い合わせ先がはっきりしているか。
  • 表現:「精力が回復する」「EDが改善する」など、病気や体の機能への効果を断定する表現は、食品では認められていません。

製品選び全般のチェックポイントは品質の見分け方、表示のルールや医薬品成分の混入については「精力剤」「強壮剤」の種類と区分をご覧ください。

こんなときは医療機関へ

  • 勃起しにくい、維持できない状態が続いている。高麗人参の効果は治療薬に比べてごく小さいと考えられています。また、勃起の問題は高血圧・糖尿病・脂質異常症など血管の病気の早いサインであることがあります。泌尿器科やかかりつけ医に相談してください。
  • 疲れが何週間も抜けない、以前と比べて明らかに疲れやすくなった。貧血、甲状腺の病気、糖尿病、睡眠の問題、うつ状態などが隠れていることがあります。
  • 飲み始めてから眠れない、動悸がする、気分が異常に高ぶるなどの変化があった場合は、中止して医療機関に相談してください。

参考文献

  1. Lee HW, Lee MS, Kim T-H, Alraek T, Zaslawski C, Kim JW, Moon DG. Ginseng for erectile dysfunction. Cochrane Database Syst Rev. 2021;4:CD012654.
  2. Li X, Yang M, Zhang YL, et al. Ginseng and Ginseng Herbal Formulas for Symptomatic Management of Fatigue: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Integr Complement Med. 2023.
  3. Kim HG, Cho JH, Yoo SR, et al. Antifatigue effects of Panax ginseng C.A. Meyer: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. PLoS One. 2013;8(4):e61271.
  4. Ang-Lee MK, Moss J, Yuan CS. Herbal medicines and perioperative care. JAMA. 2001;286:208-216.
  5. Memorial Sloan Kettering Cancer Center. About Herbs: Ginseng (Asian). https://www.mskcc.org/cancer-care/integrative-medicine/herbs/ginseng-asian
  6. 医薬基盤・健康・栄養研究所「『健康食品』の安全性・有効性情報」. https://hfnet.nibn.go.jp/
  7. 厚生労働省「統合医療」情報発信サイト(eJIM). https://www.ejim.mhlw.go.jp/

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